Google広告の自動入札に必要なコンバージョン数の目安と、件数より先に疑うこと
自動入札に切り替えたのに、CPA(1件あたりの獲得単価)が安定しない。あるいは、切り替えるべきか迷っている。そんなとき、まず疑うのは「コンバージョンが足りないのでは」だと思います。
それは半分は正しいです。件数には、たしかに目安があります。
ただ、件数を満たしていても自動入札が回らないことがあります。そのとき本当に足りていないのは、コンバージョンの「数」ではなく「中身」です。
上場企業でマーケティング責任者を務め、月間1億円規模の広告費を統括していました。責任者になる前は自分で運用も担当していました。現在はMarket Engineering代表として、GA4/GTM/sGTM等の広告計測設計、広告運用代行、広告運用のインハウス移行を北九州・大阪の2拠点で支援しています。
① 自動入札の学習に必要なコンバージョン数の目安
結論、tCPA(目標コンバージョン単価)で回すなら、1日あたり3件以上を一つの目安にしています。tROAS(目標広告費用対効果)なら、その倍の1日6件以上です。
一般には「過去30日で30件程度」といった目安がよく紹介されます。月にならせば1日1件です。私の体感は、それよりだいぶシビアです。
なぜ日次で見るのか? 自動入札の学習は、直近のデータに強く引っ張られるからです。
1日1件では、たまたま獲得できない日が続くと、機械は「最近は取れていない」と判断して入札を引きます。すると翌週の件数がさらに減る。この悪循環に入ると、学習は安定しません。
まず確認してほしいのは、自社の1日あたりのコンバージョン件数です。ここは私の数字ではなく、あなたの管理画面の数字を見ないと判断できません。
3件(tROASなら6件)を下回っているなら、量の問題が濃厚です。この場合は③に進んでください。件数は満たしているのに不安定なら、②を疑います。
② 件数が足りているのに回らないなら、疑うのは「データの中身」
自動入札は、送られてきたコンバージョンを「正解」として学習します。だとすると、その正解が汚れていたらどうなるか?
機械は、汚れた正解に向かって最適化を続けます。二重に計上されている経路に入札を寄せ、取りこぼしている経路からは引いていく。件数は足りているのに、広告費の配分だけが静かに歪んでいきます。
私自身、会社員時代にこれを経験しました。ツールが計測していたコンバージョンに、コンバージョンではないイベントが混ざっていたのです。計測を直したところ、広告費を40%削減しながら、コンバージョン数は58%増えました。
件数は、直す前から足りていました。足りていなかったのは中身です。この経緯はweb計測環境を整えたら「広告費40%減・コンバージョン58%増」に詳しく書きました。
確認してほしいのは、広告管理画面のコンバージョン数と、GA4(または社内の受注データ)の実数の乖離です。同じ期間・同じ定義で並べます。
2-3%以内なら、計測の中身は最優先の課題ではないかもしれません。倍以上ずれているなら、自動入札はいま「壊れた正解」を学んでいます。件数を増やす前に、ここを直すのが先です。
なお、この修正が社内でなぜ後回しにされやすいかは計測の稟議が通らないのは、担当者の説明が下手だからではないに書きました。
③ 件数が足りないときにやること
1日3件に届かない。そういうとき、いきなりコンバージョンの種類を増やすのはおすすめしません。理由は後で書きます。先に、効く順番から。
1. 広告グループ・キャンペーンの統合。
この方法が一番現実的で効果的です。
目的が同じなのにキャンペーンや広告グループが細かく割れていると、データがバラバラの箱に分散します。1箱あたりの件数が薄くなり、どの箱も学習に届かない。
箱を束ねて、1つあたりの件数を増やす。構造をいじるだけなので、追加の広告費なしにできます。
ただし、統合するキャンペーンやグループの配信目的や訴求が違うのであれば、統合するとかえって悪化する可能性があるためトレードオフになってしまうことを認識して実行しましょう。
2. 入札戦略を一段やさしくする。
tCPAやtROASのように目標値を握らせる戦略は、件数が薄いとAIも調整するのが難しいです。一旦「コンバージョン数の最大化」という最適化ロジックに設定して、データが貯まってからtCPAやtROASに戻すのも効果的です。
最適化に使うコンバージョンを最初に蓄積することで、調整が難しいtCPA,tROASでもAIが上手く調整できる環境を作ってあげることができます。
3. マイクロコンバージョンの追加は、最終手段です。
フォームの到達や電話番号のタップなど、最終成果の手前のイベントを補助的にコンバージョンとして送る方法です。
正直、これでうまくいくことは少ないです。最終成果より一歩手前の行動を学習させることになるので、②の誤学習を自分で作りかねません。ただ、件数ゼロで放置するよりはマシ、という位置づけで最後に検討します。
④ 「増やす」より「濁りを減らす」
③の3で書いたことの裏返しです。件数の目安を満たすために、価値の低いイベントをコンバージョンに足す。これは②で書いた誤学習を、自分の手で作る行為です。
方向は逆です。データは増やすより、濁りを減らすほうが先です。
私が計測を立て直したとき、改善が可能な単位で成果を全て洗い出しました。媒体の単位、キャンペーンの単位、ターゲティングの単位。粒度を絞らず、改善できるものは全部です。
学習を阻害するコンバージョンを減らすと、短期ではコンバージョンが減りますが、AIが学習に使うコンバージョンの精度が高まることでかえってコンバージョンが増えたり、CPAが下がったりします。
ここから先は、自社のデータを見ないと決まりません
ここまでの判断は、次の3つを自分で見ないと確定できません。
- 1日あたりのコンバージョン件数。 tCPAで3件、tROASで6件が最初の分かれ目です
- 管理画面のコンバージョン数と、GA4(または受注データ)の乖離。 倍以上ずれていれば、②がそのまま起きています
- 自動入札に預けている広告費の額と割合。 ほとんどを自動入札に預けているほど、②の歪みの影響は大きくなります
よくある反論への回答
「学習期間が終われば安定するのでは?」
件数が足りていれば、いずれ安定はします。ただ、安定と正しさは別です。冒頭の40%減・58%増のケースは、直す前も数字は安定していました。安定して、間違った方向に最適化され続けていただけです。中身をきれいにすれば、今よりもっと高いレベルで安定します。
「コンバージョンを増やせば全て解決では?」
何かコンバージョンを増やす策が他にあるのであれば、それを先に実行するのもアリでしょう。ですが、コンバージョンをきれいに整理することをしなくて良い理由にはなりません。
「手動入札に戻せばいいのでは?」
大規模な広告費を使う広告アカウントで、手動に戻し続けるのは現実的ではありません。いまの時代のAIに入札で勝てる人間は少ないですし、入札している時間に他のことができます。手動入札を頑張るより、機械に渡すデータを正しくするほうが本筋だと考えています。
そのまま使える診断フロー
上から順に見てください。
1. 1日あたりのCV件数は?
tCPAで3件 / tROASで6件 未満 → ③へ(まず構造の統合)
2. 件数は足りているのにCPAが不安定 → ②へ(中身を疑う)
3. 管理画面のCV数とGA4の乖離は?
倍以上ずれている → 計測の修正が先(件数を増やす前に)
2-3%以内 → 入札戦略・アカウント構造の見直しへ
4. 自動入札に預けている広告費の割合は?
高いほど、②の歪みが効いてくる
診断フローの最初の一歩、管理画面とGA4の乖離を確かめるには、GA4の計測が正しく組まれているかの確認が要ります。GA4の設定を10項目でチェックできる無料チェックリストを用意しています。
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