web計測環境を整えたら「広告費40%減・コンバージョン58%増」。

広告費40%削減、コンバージョン58%増加。効いたのは計測の修正そのものではなく、正しい数字で初めて見えた「獲得ゼロの出稿を止める」判断でした。実際にやった3ステップと、自社で確かめる方法を書きました。

web計測環境を整えたら「広告費40%減・コンバージョン58%増」。

結論、広告費を40%削減しながら、コンバージョン数を58%増やしました。会社員時代の話です。

先に種明かしをします。派手な施策は何もしていません。

壊れていた計測を直し、出てきた正しい数字を信じて、獲得できていない出稿を止め、獲得できている出稿に予算を寄せた。ほとんど、これだけです。

そして、ここは正確に書きます。計測を直しただけでこの数字になったわけではありません。 計測の修正は前提条件にすぎません。

お金になったのは、そのあとに実行した「止める」と「配分し直す」という判断のほうです。計測がやったのは、その判断を可能にしたことだけです。ただ、その「だけ」がない間、判断は一度も始まりませんでした。

上場企業でマーケティング責任者を務め、月間1億円規模の広告費を統括していました。責任者になる前は自分で運用も担当していました。現在はMarket Engineering代表として、GA4/GTM/sGTM等の広告計測設計、広告運用代行、広告運用のインハウス移行を北九州・大阪の2拠点で支援しています。

前の記事計測の稟議が通らないのは、担当者の説明が下手だからではないで、ツールのコンバージョン数と社内DBの実数が食い違っているのに、調査が「そんなことあるわけない」で止まった話を書きました。この記事は、その計測を直したあとに何が起きたかの続きです。

① 壊れた計測の下では、無駄が「成果」に見えていた

何が起きていたのか?

コンバージョンではないイベントが、コンバージョンとして数えられていました。その結果、広告の管理画面上では、どの媒体もそれなりに成果を出しているように見えていました。

ここが、計測不備のいちばん厄介なところです。壊れた計測は「数字が出ない」という形では現れません。

壊れた計測は、無駄を成果の顔にして見せてきます。 成果が出ているように見える出稿を、止められる人はいません。

さらに、その数字は人間だけが見ているわけではありません。自動入札は、送られてきたコンバージョンデータを正解として学習します。誤ってカウントされた経路には入札が寄り、本当に獲得できている経路からは引いていきます。

予算配分の会議も、同じ数字を根拠に組み立てられます。機械の最適化と人間の意思決定が、そろって「壊れた正解」に向かって走っている状態でした。

カウント方法を修正して、初めて見えたものがあります。コンバージョンをまったく獲得しないまま、広告費だけを消化していたメディアやターゲティング手法が、実際に存在したということです。

修正前は、それらも成果を出している側に並んでいました。修正後に、並びが変わりました。

② やったことは3つ。修正、停止、再配分

やったことを順に書きます。

1. カウント方法を修正する。 コンバージョンではないイベントを、コンバージョンから外しました。

この時点では、売上は1円も増えていません。増えるどころか、管理画面上のコンバージョン数は減ります。

2. 獲得ゼロの出稿を止める。 修正後の数字で、獲得がないまま費用だけを使っていたメディアとターゲティング手法を洗い出し、停止しました。ここが実際にお金を動かした工程です。

3. 獲得できている手法へ再配分する。 止めて浮いた予算を、修正後の数字で本当に獲得できていた側へ寄せました。

では、なぜ広告費の削減とコンバージョン増が同時に起きるのか?

削減とコンバージョン増は、普通はトレードオフです。出稿を減らせば接触は減る。同時に成立するのは、削った部分が、そもそもコンバージョンを生んでいなかったときだけです。

獲得ゼロの出稿を止めれば、費用だけが減ってコンバージョンは減りません。その浮いた分を獲得できている側に足せば、コンバージョンは増えます。だから40%減と58%増は、別々の成果ではなく、同じ一つの操作の裏表なんですよね。

裏を返すと、この手が使えるのは、無駄がまとまった塊で存在していた場合だけです。そして無駄が塊で存在していたのは、計測が壊れていて、誰にも見えていなかったからです。

③ 自社で同じことが起きているかを確かめる方法

ここから先は、記事を読んでも判断できません。自社の数字を見る必要があります。見る順番は3つです。

1. 広告管理画面のコンバージョン数と、社内の実数を突き合わせる。 実数とは、受注・申込・問い合わせが記録されているデータベースの側です。同じ期間、同じ定義でそろえて並べます。

ここで見るべきは、差の大きさより増減の方向です。ツール側が増えている月に実数が減っているなら、それはもう精度の問題ではありません。

数えている対象が違います。私のケースで最初に見つけたサインも、これでした。

2. コンバージョン獲得がゼロなのに、費用を消化している行を抽出する。 媒体、キャンペーン、ターゲティング手法の粒度で、期間を区切って並べます。

学習中の新規配信なら当然ゼロもありますが、何か月も同じ行がゼロのまま費用だけを使っているなら、それが止める候補です。1で方向のズレが出ているなら、この一覧は修正前と修正後で中身が変わります。

3. その数字を信じて止める意思決定を、誰ができるのかを確認する。 ここがいちばん詰まります。技術的には数時間の作業でも、「代理店の提案で始めた出稿を止める」「上長が決めた媒体を落とす」という判断には、社内の合意形成の時間がかかります。

手順そのものはAIに聞けば出ます。詰まるのは常にそこではありません。この構造はAI時代にコンサルへ発注する意味は、知識ではなく時間だったに書きました。

1と2が出たとき、3の答えが「誰もできない」なら、計測を直しても数字は変わりません。私のケースで40%と58%が出たのは、止める判断まで実行できたからです。


よくある反論への回答

「たまたま、他の要因が効いただけでは?」

測定条件を正直に書きます。この数字は、私がその現場に入る前の実績と、入って6か月後の実績を比べたものです。単一施策のA/Bテストではありません。

厳密な因果の証明にはなりません。

そのうえで、事実として言えることが2つあります。同時期に、他に大きな施策は動いていません。

そして季節要因は、比較した期間ではむしろややマイナスに働く並びでした。追い風で持ち上がった数字ではない、とは言えます。

「代理店が見てくれているから大丈夫では?」

代理店が見ているのは、広告管理画面の数字です。誤カウントされたコンバージョンは、管理画面上では良い成果として表示されます。つまり誤カウントは、代理店にとって困る事象ではありません。

そして社内の受注データベースと突き合わせられるのは、そのデータベースを持っている側、つまり社内の担当者だけです。突合は構造的に、代理店側からは実行できませんし、場合によっては「見ている」と言っているだけでのパターンがほとんどです。

「6か月もかかるのか?」

誤解のないように書くと、6か月は修正にかかった時間ではありません。比較した期間が6か月です。 計測の修正と停止の判断そのものは、それより前に終わっています。

ただ、自動入札は再学習に時間を使いますし、月次の波もあります。1か月で切り取った数字を成果として出すほうが、私はむしろ危ないと思っています。

「うちの計測は代理店と制作会社が入れたものだから、そこまで壊れていないはず」

その可能性はあります。ですが、私は代理店や制作会社が入れたものでも壊れているものは多数見てきましたし、計測環境が正しく構築されているか?は定義があいまいなので、クライアントが気づきそうになければ放置です。担当者にノウハウがないので、見過ごされている場合もあります。

③の1は10分程度で見られます。方向が合っているなら、この記事は忘れてもらって構いません。合っていないなら、いま広告費のどこかが同じことをしています。


③の1と2に進む前に、そもそも自社の計測がどう組まれているかを並べる材料が要ります。GA4の設定状況を10項目でチェックできる無料チェックリストを用意しています。

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